届かないぬくもりを求めてしまうのは

  本当に寒さの所為だけなのでしょうか



冬色ヴィジョン



鼻先に当たった冷たい感触にアレンは空見上げた.

背の高い建物の上にある灰色の空は、道沿いに真四角に切り取られ、

どこか無機質に見えた.

思えば、こうして師と街を歩くのは初めてに近い.

師に拾われて随分経つが、修行や移動意外は別行動が主だった.

そんな師が買い物に行くなどと言い出したときには、雨でも降るんじゃないかと思った.

まさか、雪が降ろうとは・・・.

無性に腹が立って、目の前の背中を睨みつけようと顔を下ろすと目的の赤い髪が随分遠くにあることに気がついた.

大人と子供の歩幅を考えれば当然の摂理.

師は誰かに合わせるような人ではなかったから、アレンは常に小走りでついていかなければいけなかった.

ただ空を見上げた僅かな間でさえ立ち止まれば置いていかれてしまう.

どんどん進んでいく師に追いつくようアレンは走り出した.

しかし休日の人通りの多いこの道ではアレンの小さな体はどうしても埋もれてしまう.

前後する大人は壁のようで、進もうとしても跳ね返されて上手くいかない.

さっきまで普通に歩いていたはずなのに.

そうしている間に赤はどんどん遠くへ行ってしまう.

今呼べば、師は振り向いてくれるだろうか.

届くわけが無いと、アレンは確信していた.

近くにいても、アレンの声を聞いているのかどうか大いに疑問で、

ましてや、この距離で気がつくなんて・・・.

「ックシュン」

「馬鹿が風邪ひいてんじゃねーよ、馬鹿弟子.」

思わず我が目を疑った.

遠ざかっていた赤が目の前にある.

ぐっと腕を引かれて立ち上がらされるまで夢でも見ているのかと思った.

腕に食い込む師の指はアレンを思い遣る気はさらさらないようで、鈍い痛みが走る.

けれど、だからこそ、それが師らしくてアレンはほっとした.





夢とか、





希望とか、





理想とか、





あなたはきっと、抽象的なものをなにひとつ持っていないから





僕もあなたのリアルでしょう







そういえば、師匠と仔アレって並んでると異様ですね(笑)
・・・親子・・・・・?
08.05.22